第15期図書館協議会報告と提言(案)
          
平成18(2006)年10月26日
国立市教育委員会
   教育委員長  佐野 文代様

   
第15期国立市図書館協議会
会 長   田村 信之
副会長   田中えり子
1111 


委 員  岡  美花
     金井かず子
     久保田 弘
     中田 美治
     小沢 靖子
木村 洋一
外地 佑价
船木 深雪

       
はじめに

 第15期の図書館協議会は、2年間の任期中、市内の図書館施設見学を含め16回の
協議会を開催しました。
 協議会は、図書館職員からのヒヤリングを通じ、図書館業務全般への理解を深めると
ともに、国立市の図書館が抱えている課題等を把握することにまず努めました。
 その後こ図書館への指定管理者制度導入の問題に関して熱い討議を重ね、「図書館に、
経済性を重視する形での指定管理者制度の導入はなじみません。指定管理者制度導入の
是非についての検討は、慎重の上にも慎重である必要があります。」との意見書をまと
め、本年4月に、市長、教育委員長、教育長にあて提出しました。
 さらに5月には、図書館との共催により、20数年ぶりの「図書館利用者懇談会」を
開催しました。懇談会には30余名の参加者があり、図書館職員の専門性を発揮したサ
ービスに感謝する声とともに、図書館に対する様々な意見を聞くことができました。
 協議会はこれまでも、くにたち図書館がよりいっそう市民、利用者の役に立つ図書館
となるため、さまざまな提言を行ってきましたが、現実に問題が解決された例は少なく、
文教都市国立のイメージと図書館の実態との乖離は大きくなっています。国立市が早急
に取りくむべき課題がここにあることを、この機会にあらためて想起していただきたい
と思います。
 この報告と提言は、「これからのくにたち図書館はどうあってほしいか」という点を
意識しつつ、各委員が起草したものを討議しまとめたものです。今後の国立市の教育行
政と図書館運営に役立てていただくよう切望します。

                   
1.地域の「情報の拠点」としての図書館をめざして
これからの図書館は、そこに行けば地域の人々の暮らしが一望できるような、地域の
 「情報の拠点」になっていく必要があります。そのような図書館になるには、地域の人
々の経済、子育て、教育、環境、食、医療などの悩みや関心、希望がどこにあるか、ま
ず図書館が自ら知ろうとすることが大事です。
 図書館に、地域のさまざまな場で発信された情報が集められていることは、必要であ
りまたとても大切なことですが、現在くにたち図書館では、地域の情報を収集し発信し
ていくことがほとんどできていません。
 今後は、公民館、郷土文化館とも情報を交換しながら、市民やボランティアの協力も
得て、地域の情報を収集することや、議会、市行政、地域産業、大学、住民組織、NP
Oなどとの間で、情報を提供してもらい、図書館も情報を提供するといった、双方向の
連携を模索することがぜひ必要です。
 そのためには、くにたち図書館がやっていること、やろうとしていることを、地域に
もっとアピールする必要があります。図書館のホームページや広報紙を、市民やボラン
ティアの協力も得てより内容豊かなものにするとともに、広報紙の全戸配布の復活も考
えなければなりません。
 図書館が地域に深い関心をもち、情報を集め、自らも発信していく。人々はその中か
らきっと暮らしに役立つアイディアを見出していくでしょう。それが地域の「情報の拠
点」としでの図書館の価値を高めることにつながり、図書館をいきいきとした、だれも
が訪れ利用したくなる場所にしていくと思います。
 図書館が地域の「情報の拠点」になるためには、もう一つ大きな課題があります。
 近年の「情報化社会」の発展の中で、メディアやインターネットを通して流れる膨大
な情報のうち、どれが自分にとって必要な情報なのか、どう読み解いたらいいか、多く
の人々が迷い、不安を感じています。そうしたことから、「メディア・リテラシー」
(情報を読み解く力)を身につけることが、今ではとても重要になってきています。
 人々が自ら情報を読み解き、暮らしのあり方を選択していく力を身につけていくうえ
で、図書館はどのような役割が果たせるのか、また情報が氾濫する中で、市民、利用者
が本当に必要としている情報を、図書館はどうやって紹介、提供していくのか等、早急
に議論を深めて指針を見出だす必要があります。
 図書館には今、社会の急激な変化に対応した新たな役割が求められているのです。

2.児童サービスの充実と学校との連携を進めるために
子ども時代のよい本との出会いが人生に与える影響は大きく、その案内するのが図
書館の児童サービスです。そのためには、子どものための蔵書を充実させるとともに、
蔵書を子どもたちと結びつける工夫が大切です。くにたち図書館のカウンターの職員が、
どの子にも敬意と笑顔をもって接していることは、嬉しいことです。この暖かさを今後
とも大切にしてほしいと思います。
 子どもが前に立ったとき、絵本たちが“わたしを見て”“読んで”と呼びかけるよう
な書架だったら、自然と手が伸びます。現状は、中央館の児童室には本が詰まりすぎて
いて、あまり手にとりやすい状態とはいえません。また乳幼児の親子の利用が増えても、
ゆったりと絵本を楽しめるような親子でくつろげるコーナーもありません。これはスペ
ース不足の問題が大きいのですが、早く改善してほしいと思います。
 各分室は子どもの生活圏の中にあり、子どもと本が出あう一番身近な場所です。図書
館は今後もきめ細かな目配りをしていって下さい。
 図書館員とともに市内の小学校や福祉施設などに出かけ、二十数年お話を語りつづけ
ている「くにたちお話の会」の活動は、全国的に見ても図書館とボランティアの関係の
モデルともいわれています。図書館の講座から生まれた「絵本ボランティアの会」も含
め、会と図書館の協力関係を今後も維持し、さらに育てていくことが必要です。
 国立市では中学校に続いて、6年前から市立の全小学校に図書員が配置されています。
学校図書館にいつも人がいることで、よく整理された落ち着いた空間で子どもたちは本
に触れることができるようになりました。今後は、学校図書館の質の向上のため、新た
な図書員の採用にさいしては、司書、司書教諭などの有資格者の採用が望まれます。ま
た図書館の職員が、学校図書館担当教員と図書員の研修に毎回参加し、教員、図書員が
異動しても学校図書館が計画的に整備されていくよう、基本図書、推薦図書、選書及び
廃棄基準などについて、図書館として情報提供できるような態勢をつくってほしいと思
います。
 また、学校図書館にくにたち図書館や他校の図書館とつながるコンピューターを導入
し、子ども自身が検索することで読書の幅を広げ、図書館の蔵書を有効に活用すること
ができるようなネットワークシステムの構築が望まれます。

3.ヤングアダルト(中高生・成人前の若者)
くにたち図書館はボランティアの協力もあって、児童サービスには非常に力を入れて
 います。ところがヤングアダルトサービスは、それと比べるとほとんど手つかずの分野
 といってよいかもしれません。小学生のうちはよく本を読んでいても、中学生になる頃
 から本離れしていく傾向が強い中で、この断絶をどうのりこえ、読書の習慣をつなげて
 いくか、図書館の役割がいま問われています。図書館にあまりやってこないこの世代に

どう対応するか、早急に具体策を立てるときにきていると思います。
 十代の若者に対して図書館が魅力を発揮するには、まず若者の側から見て生きのよい
図書、雑誌等がそこにあることが必要です。またAV(視聴覚)資料ももっと充実させ
る必要があります。現状は魅力的なコレクションがあるとはとてもいえません。マンガ
も同様です。多くの中高生かマンガを読むのであれば、それに応えていく柔軟な姿勢が
必要です。ライトノベル(中高生をおもな対象とする、表紙にイラストがついたファン
タジーなどの読物)にも同じことがいえます。それに資料の配置にも工夫が必要で、現
在のように、AVはAVコーナーという形で囲い込むより、メディアの形態にこだわら
ない配置を部分的にでもとることで、魅力のある書架が作れるのではないかと思います。
 ヤングアダルトサービスは、図書館のサービスの中では比較的新しい分野で、児童サ
ービスに比べ経験の蓄積が十分とはいえません。とくに若手の図書館職員がこの分野の
研修をかさね、先進的な図書館に学びつつ、独自のヤングアダルトサービス提供の推進
力となってほしいと思います。

4.障害者サービスの改善のために
くにたち図書館では、ボランティアの協力を得て、おもに視覚障害者を対象に、市報
等の広報紙、情報誌、新聞、図書などの朗読テープや点字本を製作し、貸出を行うほか、
対面朗読など各種のサービスを実施してきました。近年、朗読テープの貸出巻数は減少
傾向にありますが、反対に全国のネットワーク網による他館との貸借が急増しています。
現在障害者サービスの課題として急浮上しているのは、視覚障害者の間でDA I SY
(デイジー)
図書(テープに代わる、1枚のCDに50時間以上の収録が可能なデジタル図書)が普
及し、利用が拡大している中で、図書館がそれに対応できていないことです。昨年度に
は、「東京都公立図書館DAISY図書作成マニュアル」も完成しています。国立市に
おいても、マニュアルに沿った編集作業の学習会などを早急に始める必要があります。
 中央館の現状は、車いすの利用者にとって非常に使いにくい空間です。資料を求めて、
あるいは知的くつろぎを求めて図書館にやってきても、1階の雑誌のコーナーや奥のC
Dのコーナー、3階にある美術書の本棚など、近づくのが困難です。狭いところに置か
れた脚立や椅子にも道をふさがれます。また点字資料の利用者にとっては、資料が1階
にあると利用しやすいのですが、現状はそうではありません。こうした点を改善しよう
にも、現在の建物ではスペースが足りないのが現実です。建て替え等により、車いすの
 利用者に限らず、さまざまな障害があっても自由に書架に近づけるような図書館に早く
なっていくことが望まれます。
 障害者サービスの問題は、高齢者へのサービスの問題と重なる面があります。高齢化

のいっそうの進展にともない、図書館の利用者の中でも高齢者の占める割合が年々大き
くなっており、七十才代、八十才代の利用者が増えています。高齢となり、身体機能が
低下していく利用者へのサービスをどう展開するか、これまでは課題としてあまり認識
されていませんでしたが、今後障害者サービスとの関連も含め議論を深めていく必要が
あります。

5.先送りできない中央館の立替問題
図書館協議会ではすでに10年前の第10期に、中央館の建て替えについて提言して
います。そこでは「中央図書館は、現在面積の最低3倍以上の面積が必要であること。
また、低層階で独立した施設であることが望ましいことなどから、中央図書館の建て替
えについて、長期計画への取り組みを早期におこなうよう要望します」と述べられてい
ます。さらに第11期の報告では、「広くゆったりしたスベースは車椅子も通れるし、
書架も低くどの本も踏み台なしに手にすることができる。……音読テープもイヤホーン
で自由に聞くことができる。子どもたちはカーペットの上で、思い思いの姿勢で童話の
本をひろげている。お年寄りも大きな活字本をソファーで読んでいる」とイメージをひ
ろげ、「こんな図書館ができたらと想いをめぐらせ」ています。
 しかしこうした願いは、現15期に至るも厳しい市の財政事情により実現できており
ません。その間にも施設の老朽化はいっそう進んでいます。蔵書が増えるとともに空間
はますます余裕をなくし、上に述べたような多様なサービスを始めたくても、多くはス
ペースの壁に突きあたってしまいます。
 中央館を現在地で建て替えるとなると、財政問題だけでなく、都市公園法の制約をク
リアしなければならないなど難しい問題もあります。それでも、これまで述べたような
いくつもの課題に応えるためには、中央館の建て替えは先送りできない問題です。市及
び議会は、早急に具体的な検討にとりかかってほしいと思います。

6.今こそ国立駅前に図書館を
多くの人々が利用する国立駅周辺`に図書館をつくってほしいという市民の願いは、長
年あります。とくに通勤、通学に国立駅をつかう市民にとって、帰途に図書館が利用で
きれば、図書館がいっきょに身近になるに違いありません。
 国立市では、すでに1983年の市議会で「国立駅周辺に図書館の設置を求める請願」
が全会一致で採択されており、図書館協議会でもたびたび提言などで要望してきました。
 また「国立駅前に図書館をつくる会」の住民運動もあり、夜間も開館する駅前図書館
の設置を目標に、市民への呼びかけが行われてきました。
現在多摩地区では、吉祥寺、三鷹、立川、豊田、西八王子、東中神、青梅、調布、府
中、聖蹟桜ケ丘、町田などの駅前ないし駅近くに、数多くの伺書館が設置されています。
 しかし国立市では、厳しい財政状況のもとで、駅前の図書館の設置は長年棚上げされ
てきました。
 いま、国立市では中央線高架化事業が行われ、駅周辺のまちづくりが進んでいます。
駅前に図書館を設置する絶好の機会です。具体案の一つとして、中央線の高架下の用地
のうち、国立市が活用できることになっている部分(約3000m2)の中に図書館を設
置することがまず考えられます。
 市及び議会は、緊急に駅前に図書館をつくるための行動を起こしてほしいと思います。

7.図書館の中核となる専門職員の補充を急いでください
現在くにたち図書館は15名の正規職員、9名の嘱託員と臨時職員によって運営され
ています。図書館の正規職員は、この2年の間に開館・開室時間及び日数が延長・増加
したにもかかわらず削減され、職員の勤務時間のズレがより拡大しています。そのため
日常の業務に追われて、職員が課題を共有して研修を重ね、図書館職員としての力量を
蓄積していく時間が確保し難くなっています。そうした中で、2年後正規職員をあらた
に2名削減する計画が伝えられており、私たちはこれに大きな危惧を感じています。
さらに心配なのは、現在正規職員のうち館長を含む10名が司書ですが、その多くが
今後数年のうちに定年を迎え、このままいくと5年後には、開館時に専門職員として採
用され、30年にわたり中心となって図書館を担ってきた司書が、皆いなくなる可能性
が大きいことです。
 こうした事態に有効な対策を打ち出さないままでは、図書館サービスは空洞化してし
まう恐れがあります。現在くにたち図書館は大きな危機に直面しているといえます。
図書館の価値は、利用者と資料を仲立ちする図書館職員の力量によって大きく左右さ
れます。図書館は、利用者の要求に広く応えるとともに、将来に備えて基本的な図書を
含む多様な蔵書を構築し、レファレンス(利用者の求めに応じて資料・情報の提供・紹
介を行う業務)などにも的確に対応することができる専門職員を中心に、市民サービス
の理念と熱意をもった職員集団によって支えられる必要があります。
 そこで、いま緊急に要請したいのは、図書館の中核となる専門職員の補充を急いで検
討してほしいということです。その際は、現在の片寄った年齢バランスを是正するため
にも、できるだけ年齢層の異なる、経験豊かな司書の採用を重視した計画づくりを行っ
てほしいと思います。
 そのことをとくに切望して今期報告と提言の終わりとします。